シナプス全細胞の日記

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子供は正義

 湿った夜の道をドライブしていた。目の前には黒のワンボックスカーが走っていて、5歳くらいの子供二人が窓から顔を出している。

 

彼らは、流れゆく夜の町並みを見ているようだったけれど、ふと、後ろにいる俺たちの方に顔を向けたので、僕は手を振ってみた。

 

彼らは不思議そうな目をして僕のことを見ると、すぐにそっぽを向いた。

 

彼らは顔に当たる風の感触だとか匂いだとかを楽しんでいるように見える、が、実際にはそんな小難しいことなんか考えていないんだろう、ただ強い風に当たるのがなんとなく楽しいから、顔を出しているのだと思う。

 

風でなびいている髪の毛が柔らかそうだった。僕らは次の信号を右に曲がりたかったので、彼らの隣の車線に移った。信号は赤に変わり、隣り合う形で停車した。横に来た僕らをますます不思議そうな目で見ていたので、僕は助手席に乗っていた友人にアンパンマンのマーチを流してほしい、とリクエストした。

 

疾走感のあるイントロが始まった。携帯の音量ボタンを連打して限界まで音を大きくする。左側の窓を半分ほど開けると、爆音のアンパンマンマーチが夜の街に轟く。

 

子供達が「アンパンマンだーーー!!」と叫ぶ。俺と兄貴は彼らが楽しそうに笑っているのをみて、なんだか良いことをした気分になって一緒に声を上げて笑った。

 

子供は正義だ。彼らを笑顔にするものはなんだって正しいのだ。